オーダーメイド家具専門の職人一筋で生きてきた私は今迄、自己啓発本というものに触れたことが一度としてなかった。「そんなものを読んだところでどうせ忘れてしまうから意味がない。」そんな気持ちが強かったからである。
故に小難しい本は一冊もなく書斎といって良いのかは分からないが私の部屋は漫画本で満ち溢れていた。しかし、その後暫くして私が自己啓発本を読む機会が訪れる。それはある日、漫画家志望の友人と地元の書店に訪れた時の話だ。
いつも通り、私はコミックスのコーナーに足を運び、彼は背景の描き方やらPhotoshopに関する本を探していたのだが、数分後に私を彼が呼ぶ。何事かと思い、彼の元に足を運ぶとにやにやした表情で「お前、いっぺんこれ買って読んでみろ。」とある自己啓発本を手渡される。
「何故、私が。」と思ったがあまりにも本のタイトルが私の胸に突き刺さるものだった為、購入することにした。帰宅後、その啓発本を読んだのだがそこには今まで私の考えたこともない思想がありありと記されていた。
最後まで読み終わるのには1日もかからず、自分の現状を過去のトラウマのせいにして今を生きていない私を情けなく感じ、読後は涙を流していた。今では、啓発本が私の書斎に増えていく日々が続き、書斎も輝いているように見える。