書斎という名の幸福に浸る

書籍を求めてはそれを楽しみ自分にない世界を得ようとする人間たちにとっての究極の夢はおそらく書斎と呼ばれる場所を持つことでしょう。誰もがその境地に達せられるわけではもちろんありません。

 

ごく普通の家庭に生まれた場合には書斎の域に達するためにはかなりの努力が必要といえます。
もしも書斎があったならどんな本棚や机を置こうかなと考えている。こう本気でつぶやく定年間際のオカタと話していた時、本を読むタイプの人の執念を思い知りました。書斎を持ちたいと思う気持ちをモチベーションにして今まで頑張ってきたのだとその人はきっぱりというのです。

 

やっとあと少しで退職だ、とうとうローンも終わったぞ、マンションの一部屋が自分の書斎になるんだと言っていたその人のご自慢の書斎へとついに招待される日が来ました。それまでは積み上げられた本でいくらか雑然としていた場所は見事に文豪のお部屋のようになっていました。

 

その方の晴れ晴れとした顔と言ったらありません。本棚を好きなだけ眺め、気に入った好きな本に囲まれて三々五々手に取れる幸福以上の何かがあるであろうか。そんな風に思ったのものでした。頑張ってきたからこそ喜びもひとしおです。

 

今日もその人は書斎でゆっくりとした時間を過ごしているはずです。